遠野物語の周辺から

遠野物語語り部であった佐々木喜善という人物に奇妙な親近感を覚える。彼が文学を志しつつも、半ばにして挫折を味わったことだろうか、それとも知識人として地方行政に携わりつつも大きな挫折を味わったことだろうか(地方農政の理想を追うあまり、故郷を追われた彼の境遇には同情にあまりある)。それでも生涯を民俗と民話の採集についやした彼の人生をどこか崇敬したい気持ちになる。彼の土地に根ざしたまなざしは、柳田なんかよりずっと温かく今にとどく。そう思いたい、ことに気づく。